秋の到来を感じる「ともしびの祭」の行列

北部の国境近辺（フランス）

日本と比べて緯度が高いヨーロッパでは、夏は夜遅くまで昼日中のような明るさなのに、冬は夕方にはどっぷりと暮れる暗さです。自然、日が長くなるのも短くなるのも、一足飛びに進みます。

行列が始まるのを待つ人々と巨人

実際、この時期のフランス北部では、一日約3分の勢いで日照時間が減っています。150年ほど前は、秋分の日を過ぎ、日が短くなると、活躍するのはランプでした。ランプを灯す夜の再来を告げる習慣として生まれたのが、このFête des allumoirs（ともしびの祭）、フランス北部に今も残る風習です。

子どもたちの提げるぼんぼり

ぼんぼりを持つ人々

古くは、工場や製作所なども数日休みとなり、工員やその家族みんなで大々的に祝ったもののようです。一番の盛り上がりは、ぼんぼりを持った子どもたちの行列でした。地域の鼓笛隊を先頭に、ビーツ（砂糖カブ）やかぼちゃをくりぬいて作ったぼんぼりを手に子供が列を作って町を練り歩くというものでした。

大道芸人グループCompagnie des Quidamsによるパフォーマンス

今も続いているのが、このぼんぼり行列です。祭りが近づくと、紙製のぼんぼりが市役所や地域の学校などで売られますが、手作りのものを持参する子供たちもいます。開催地は、フランス北部のベルギーとの国境に近い複数の町で、時期も9月半ばから10月終わりまでとばらつきがあります。
ひとつの町でも、小さな区域ごとに分かれて開催したりと、非常にローカル色の強いものなので、全体像を把握できるインターネットサイトは今のところ存在しません。日時も開催直前に決まるところが多いようで、調べるには、各自治体のサイトを確認するか、問い合わせるかしかないようです。

大道芸人グループCompagnie des Lutins réfractairesによるパフォーマンス

大道芸人グループCompagnie des Quidamsによるパフォーマンス

今年2016年に関していえば、今日9月15日現在、開催が決定されている自治体と日程は次の通り：
・アルアン（Halluin）：9月17日18時からジャカール（Jacquard）通りにて。
・ロンク（Roncq）：10月1日19時半ごろから。リル（Lille）通りのスタジアムカフェ（café du stade）が出発点。
・ワンブルシ（Wambrechies）：10月1日19時半からロベルサール城中庭にて光のショー（セキュリティの都合により今年の行列は中止になりました）。
・リス・レ・ラノワ（Lys-lez-Lannoy）：10月8日18時半プティプランス（Le Petit Prince）学校を出発、あるいは19時にスタン（Stein）広場出発。
・ボンデュ（Bondues）：10月8日19時から、オボー（Obeaux）学校のパーキングにて。
・ムーヴォー（Mouvaux）：10月15日18時半から（行列コースは未定）。
・ウィレム（Willems）10月15日。
・トゥルコアン（Tourcoing）：複数の地域で、10月20日ごろから11月頭にかけて（日程は10月頭に決定予定）。

大道芸人グループCompagnie des Lutins réfractairesによるパフォーマンス

自治体によって、ブラスバンドの演奏や、大道芸人による光のショーを予定しています。またこの地方の特徴である地域の「巨人」の行列参加もあり、お祭り気分を盛り立ててくれます。
行列自体はゆっくりとしたものですし、子供でも歩ける距離ですから、見に行くのなら、ぼんぼりを持参して、一緒に行列に参加することをお勧めします。どんどん暮れる町中を歩いていると、手に持った灯りのありがたさがよく分かります。また、こうして祝うことで、季節の移り変わりを身体で感じ、暗く長い冬に向かう心の準備もできたのかもしれない、と感じられるお祭りです。

投稿者：冠ゆき

山田流箏曲名取。1994年より海外在住。多様な文化に囲まれることで培った視点を生かして、フランスと世界のあれこれを日本に紹介中。
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