夏の終わりを告げる、お牛様たちのご帰還「アルムアプトリープ」

アルゴイ地方ではアルムアプトリープのことをフィーヒシャイト(Viehscheid)と呼びます。インメンシュタットにて

アルプス麓の町や村(ドイツ、オーストリア、イタリア、スイスなど)

夏のアルプスを歩いたことのある人なら、一度はカランカランというのどかなカウベルの響きを耳にしたことがあると思います。

素朴な村のアルムアプトリープ

素朴な村のアルムアプトリープ

アルプス麓の酪農家は、毎年5月になると飼っている牛たちの一部を山に送り出します。牛たちはヒルテ(Hirte)と呼ばれる人々(「牛飼い」という訳語はしっくりこないのですが、要するに山で牛たちの安全に気を配り世話をする人たちです)に連れられて山に登り、夏の間をアルムで過ごすのです。

高いタワー状の飾りはベルヒテスガーデン地方の特徴

高いタワー状の飾りはベルヒテスガーデン地方の特徴

「アルプスの少女ハイジ」でお馴染みのアルムという言葉、聞いたことはあっても実際にどういうものか知らない人が多いのではないでしょうか。アルムは夏の間牛が放牧される山の上の緑地帯で、ヒルテたちが寝泊まりしたり、絞った乳を加工するための小屋が建っています。山の斜面を行ったり来たりしながらみずみずしい草やハーブを食し、山の空気をたっぷり吸った牛たちは体が丈夫になるそうです。

誇らしげなヒルテのお兄さん

誇らしげなヒルテのお兄さん

山のパノラマを背景に、日陰でのんびり寝そべりながら草を食んでいる牛たちを見る度に「いい生活してるよなぁ」とちょっとうらやましい...。乳牛を放牧しているアルムでは1日2回乳を絞ってバターやチーズが作られます。登山客においしいチーズを提供している所もあるので、機会があれば是非お試しあれ。

油断すると列を乱す牛も・・・

油断すると列を乱す牛も・・・

さて秋になると牛たちはそろそろ村に戻らなければなりません。牛たちが山から下りてくる、これがアルムアプトリープと呼ばれる行事です。落雷や突然の降雪、滑落事故など、危険と背中合わせの山の生活を無事に終えた牛たちは、花や木の枝やリボンで美しく飾られ山を下ります(逆に事故や病気で牛が死んだりすれば、飾りはありません)。

「ちゃんと見えてる?」

「ちゃんと見えてる?」

家の前に勢ぞろいして牛の帰りを待つ人々

家の前に勢ぞろいして牛の帰りを待つ人々

麓の村や町では祭りを開いて牛たちの帰還を賑やかに歓迎します。牛たちを連れて通りを練り歩くヒルテたちの顔も誇らしげ。牛たちはその後、カウベルを外されて持ち主のもとに返されるのです。

近くで見ると意外と大きいカウベル。重そう・・・

近くで見ると意外と大きいカウベル。重そう・・・

アルムアプトリープは町や村によって規模も祝い方も様々です。地方によって飾りの作り方もこだわりがあります。変わり種では牛たちが船で運ばれてくるケーニッヒ湖畔のものが有名です。ミッテンヴァルトでは牛のみならず、山羊と羊、馬のアルムアプトリーブも行われます。

アルゴイ地方ではアルムアプトリープのことをフィーヒシャイト(Viehscheid)と呼びます。インメンシュタットにて

アルゴイ地方ではアルムアプトリープのことをフィーヒシャイト(Viehscheid)と呼びます。インメンシュタットにて

アルムアプトリープは9月半ばから10月初めにかけて行われ、ちょうどオクトーバーフェストの時期と重なるので、ビールをたっぷり堪能した後は、ミュンヘン滞在を1日延ばして郊外まで見に行ってみるのも一案です。毎年8月半ばごろに日程が発表されるので紹介したウェブサイトで確認してくださいね。

「おかえりなさい。会いたかったよ」

「おかえりなさい。会いたかったよ」

München_miruko投稿者:みるこ

1995年よりミュンヘン在住。バイエルンの文化や伝統にとても興味があります。



●開催データ
国名 ドイツ、オーストリア、イタリア、スイスなど
都市名(地域名) アルプス麓の町や村
イベント名(日本語) アルムアプトリープ
イベント名(現地語) Almabtrieb
開催時期(前回開催) 毎年9月半ばから10月初めまで
初回開催年 不明
来場者人数(規模感) 地域により異なる
アクセス アクセスがいいのは電車で行けるミッテンヴァルト(Mittenwald)、インメンシュタット(Immenstadt)、オーバーストドルフ(Oberstdorf)などで、ミュンヘンから2~2時間半
公式ホームページ 日程についてはwww.almabtriebe.de または各地観光局のホームページを参照
料金 不要
予約 不要
知名度 ★★★☆☆
おもしろ度 ★★★☆☆
開催場所(主な会場) ミッテンヴァルトの場合、市街中心地Obermarkt通り