バンコク(タイ)
バンコクの街では毎年ある時期になると、多くの商店に「齋」という文字の書かれた黄色い旗が飾られている光景が目立つようになります。
だいたい一週間ほどの期間、個人商店ばかりでなくコンビニエンスストアやスーパーマーケットの食品コーナーなどにもこの黄色い旗が飾られます。最初は意味が分からなかったのですが、調べてみると「キンジェー」と呼ばれる菜食週間のイベントとのことでした。中国旧暦9月1日から9月9日にあたる期間、タイの人々は肉食を控えます。タイに移り住んだ華僑から生まれたというこの文化は、仏教徒の多いタイで広く受け入れられ、現在ではタイ全土で行われるイベントとなりました。とはいえ元は華僑が発祥のイベントです。バンコクの中華街(ヤワラート)での盛り上がりはやはり特別です。期間中には中華街全体が黄色で染まり、盛大なお祭り状態が続きます。
キンジェー期間中、人々は肉食を止めるばかりでなく、香辛料などで刺激の強い味付けの料理も控えます。牛乳や動物性油、アルコール類の摂取も控えます。普段以上に動物を愛し、タンブン(徳を積むための行為、寺社への参拝など)を心がけます。中華街を歩いていると、大通りで行われているパレードで大騒ぎする人々がいる一方で、路地裏の寺院では静かにお祈りをする人々を見かけます。外国人にはその様なギャップも面白く感じられるかもしれません。
多くの飲食店では、キンジェー期間中には菜食料理のみを提供します。例えばタイ料理であれば、通常なら鶏肉や豚肉を使用して料理される「ガパオ」も、肉の変わりに豆腐が使われます。一般的に香辛料や香草などで刺激の強いタイ料理ですが、キンジェー用に改良されたタイ料理はその刺激が抑えられた味付けになっています。これがとても美味しいのです。私はむしろこちらの方が好きだったりします。「肉を使わない」というと料理の値段が安くなるのでは、と考えられそうですが実際は逆です。たいてい、普段の料理より値が少し上がります。しかしその一方で、料理の無料提供をしている店があったりするのも不思議です。
キンジェーが菜食週間のイベントであることを書いてきましたが、これは他者から強要されるものではありません。参加・不参加は個人の自由です。一日だけ菜食にしてみる人、菜食しながら酒を飲む人、キンジェーへの取り組み方は様々です。もちろん、普段どおりの肉食メニューの提供を続ける飲食店もあります。細かい事は気にしない。とにかくイベントを楽しもう。そんな人々の姿を見ることが出来ると思います。タイ人特有の“マイペンライ精神”やアジアのカオスを体感することができるお祭りとしてオススメです。
動画:キンジェー(菜食週間)のバンコク市街ヤワラート(中華街)の様子
投稿者:もじゃ タイ在住7年目。タイ料理好き。屋台好き。酒好き。和食を全く必要としない、かなりタイ化した日本人(タイ語は全然話せないのですが)。街の路地裏を徘徊するのが趣味。基本的に単独行動派。現在、子育て奮闘中です。
●開催データ | |
国名 | タイ |
都市名(地域名) | バンコク・ヤワラート(中華街) |
イベント名(日本語) | キンジェー(菜食週間) |
イベント名(現地語) | กินเจ(Nine Emperor Gods Festival,Chinese Vegetarian Festival) |
開催時期(前回開催) | 太陰暦(旧暦)の9月1日~9月9日まで。2017年は10月20日~10月28日、2018年は10月9日~10月17日。 |
初回開催年 | 不明。中国本土から伝わったものではなく、タイが発祥といわれる。 |
来場者人数(規模感) | 中華街全体 |
アクセス | 国鉄フアランポーン駅から徒歩10分程度 |
知名度 | ★★★★★ |
おもしろ度 | ★★★☆☆ |
開催場所(主な会場) | タイ全土、華僑の居住地域、バンコクではヤワラート(中華街)周辺 |