町のあちこちから火の手が上がる「バレンシアの火祭り」

バレンシア(スペイン)

インドがテーマになった大きなファジャ

インドがテーマになった大きなファジャ

スペインでももっとも大きなお祭りのひとつに数えられるバレンシアの火祭り。町中に何百も飾られた可燃性の大きなオブジェを、最終日の夜に一斉に燃やしてしまうことで知られています。でも、それだけではありません。いったいどんなお祭りなのでしょう。

 

何百年も続く歴史あるお祭り

文献に火祭りに関する記述が出てくるのは18世紀以降だそうですが、その始まりはさらに前へと遡ります。カトリック教会では3月19日はキリストの父、聖ヨセフの日。ヨセフは大工であったことから大工の守護聖人と崇められており、大工たちが聖ヨセフの日前夜にいらない木片や木くずを燃やして祝ったことに由来すると言われています。

現在では、毎年2月の最終日曜日の夜に開会式が催されます。そして3月に入ると、毎日市役所広場での爆竹ショーがスタート。町角にはチュロスの屋台が並び、週末には大きなイベントも催され、お祭りムードが高まっていきます。子ども達、ときに大人までが道端でバンバンと爆竹を鳴らし、2週めにはイルミネーションや闘牛の連続興行も始まります。町のあちこちで設置準備中だった“ファジャ”と呼ばれる最終日に燃やす可燃性のオブジェは、15日の朝までには完成。

大がかりなイルミネーションでは、音と光のショーも開かれる

大がかりなイルミネーションでは、音と光のショーも開かれる

*動画:ルサファ地区のイルミネーションの光と音のショー(撮影:2016年3月)

 

700を超える“ファジャ”が一晩で灰になる

この“ファジャ”は、なんとバレンシア市と隣接する4つの町でも大小合計700以上飾られます。大きいものは高さ20m以上で制作費には何千万円も費やすのだとか。それをたった4日飾っただけで灰にしてしまうとは!

こんな大きな作品も灰になってしまうとは・・・

こんな大きな作品も灰になってしまうとは・・・

バレンシアには火祭りのために働く火祭りアーティストという職業があり、彼らは年間を通して“ファジャ”の制作に携わっています。お祭りのための職業が存在するってすごくないですか? “ファジャ”にはアーティストの作風が表れるので、芸術作品のように美しいものから、かわいらしいもの、デフォルメされてちょっとグロテスクなものまでさまざま。キオスクで売られている火祭りガイドブックや観光案内所でもらえる地図を片手に、あれこれと見て回るのが火祭りの楽しみです。“ファジャ”は二ノットと呼ばれる等身大の人形に囲まれていることが多いのですが、毎年社会を反映したテーマがよく見られ、政治家や王室メンバー、スポーツ選手などの顔がちらほら。今年はいくつものトランプ大統領を目にしました。

隣国との国境に壁をつくっている某国大統領

隣国との国境に壁をつくっている某国大統領

 

花火と爆音で始まるクライマックス

最終日の夜、クライマックスは10時から始まります。まずは、子ども達の小振りな“ファジャ”から点火がスタート。大きなものに火が点くのは12時です。点火前にはその場で打ち上げ花火が上がり、爆竹が轟きます。これが300数十か所で一斉に行われるので、町中が爆音に包まれ空からは灰が降ってくる始末。まことに派手な終焉です。あのクライマックスの高揚感は、体験した人にしかわからないことでしょう。なお、市役所広場の“ファジャ”は最後まで残り、1時に点火されます。

*動画:バレンシア郊外の町でファジャを燃やす(撮影:2015年3月)

 

豪華な民族衣装のパレードは必見

さて、火祭りの楽しみは“ファジャ”を見て回り、燃やすところを見るだけではありません。最終日までの間にさまざまなイベントが開かれます。

17日と18日の夕方から日付が変わる頃まで途切れなく続く献花パレードは、オススメの見どころ。バレンシア市と近隣4つの町には350を超える火祭りグループがあり、その各グループが自分たちの持ち場に“ファジャ”を設置します。この2日間は、全グループのメンバーがスペインで最も豪華な民族衣装をまとい、大聖堂横の聖母広場につくられた巨大なマリア像に花を捧げに行くのです(花で覆われたマリア像は19日以降に見ることができます)。グループごとに楽隊を従え、乳児からお年寄りまでが誇らしげに練り歩く様子は圧巻。どうぞお見逃しなく。

スペインでもっとも豪華だといわれるバレンシアの民族衣装

スペインでもっとも豪華だといわれるバレンシアの民族衣装

献花された花に覆われた巨大なマリア像

献花された花に覆われた巨大なマリア像

 

カボチャのドーナツは火祭り時期の風物詩

また、地下鉄アラメダ駅付近では花火大会も頻繁に開催されます。スペインらしく開始時間は毎回12時を過ぎるので、覚悟ください(笑)ほかにもルサファ地区のイルミネーションや連日午後2時に市役所広場で開かれる爆竹ショー、19日午後7時からの火のパレード、闘牛の連続興行などなど、イベントは目白押し。屋台では、この時期の風物詩であるカボチャのドーナツ(ブニュエロス・デ・カラバサ)やチュロスをつまんでみましょう。

カボチャのドーナツやチュロスは火祭りの定番お菓子

カボチャのドーナツやチュロスは火祭りの定番お菓子

最後に、クライマックスのアドバイスです。大きな“ファジャ”だとあまり近寄れないことがあります。また、狭いところに飾られていると、これまた大勢の人で近寄れなくなります。やはり、炎の熱さを感じながら見るのが火祭りの醍醐味。“ファジャ”をあれこれ見てまわる時に、どれを燃やすところをどこから見るか策を練っておくことをオススメします。

投稿者:田川敬子
東京都出身。初めてのヨーロッパ旅行で訪れたスペインに一目惚れ。2002年の春に6年来の夢が叶ってバレンシアで就職。日系企業、地元企業を経て、現在はマイペースで通訳やライター、コーディネートの仕事などを手掛けるなんでも屋。専門はオリーブオイル。OSAJ認定オリーブオイルソムリエ。スペインオリーブオイルスクール日本担当コラボレーター。
Facebook:https://www.facebook.com/spainoliveoil/
国名 スペイン
都市名(地域名) バレンシア
イベント名(日本語) バレンシアの火祭り
イベント名(現地語) Las Fallas
開催時期(前回開催) 2月最終日曜日から3月19日(メインは3月16日から)
初回開催年 記録に残っているのは18世紀からながら、それ以前から存在していた
来場者人数(規模感) 2016年は150万人(新聞ABC紙による)
アクセス バレンシア空港から車で20分
公式ホームページ http://www.fallas.com/index.php/es/
料金 なし
予約 なし
知名度 ★★★★★
おもしろ度 ★★★★★
開催場所(主な会場) バレンシア市内全域
開催場所(住所)  *地図位置は市役所広場