トルコ各地(トルコ)
夏休み旅行中の帰り、家畜の匂いとともに牛や羊を乗せたトラックを数多くみかけました。そろそろ、クルバンの季節だなぁとしみじみ。トルコに移住して、十数年、最初のクルバンは確か、寒い冬の日でした。イスラム教は月暦の関係で、クルバンのような宗教行事が11日ほど前にずれていきますが、2016年のクルバン・バイラムは9月12日から15日に行われました。
クルバン・バイラムは、断食(ラマザン)明けのラマザン・バイラムと並ぶ、イスラム教の二大宗教行事の一つです。別名、犠牲祭りと訳されますが、その名の通り、羊や牛などの動物を生贄として捧げ、アッラー(神)への信仰心を示します。
トルコではこのクルバン・バイラムが近づくと、田舎から生贄用の牛や羊が運ばれてきます。街の空き地に、アダック・イェレと呼ばれる家畜市場が開設され、家畜独特の「田舎の香水」がそこはかとなく漂ってきます。この運ばれてきた牛さんや豚さんたち。どうなるかというと、クルバン・バイラムまでは病気にならないように厳重に健康管理がされ、祭りの日を待ちます。
祭りの一日目、その日は日本のお正月と同じで、祖父母の家に親戚一同が会します。
朝ごはんの後、男衆がこのアダック・イェレに家畜を購入しに行きます。ネットで読んだニュースによると、2016年の羊の相場は450 ~1700トルコリラ(約1万5000円~5万6千円程度)、牛は2850~15200トルコリラ(約9万5000円~50万6000円)。これをお金のあるうちで割り勘し、羊か牛を一頭購入します。購入された牛や羊は、解体所に連れていかれ、生贄の儀式が始まります。
私にとって今年で10数年目のクルバンですが、いまだにこの生贄の儀式だけは見たことがありません。血なまぐさいのが大嫌いなのと、これを見た後、肉を食すことができなくなりそうだからです。この生贄の儀式を子供の頃から見ている旦那曰く、「家畜は眼隠しの袋を被されから、二人の大の男に抱えられ、もう一人が祈りの言葉を唱えながら、喉をブスッと切られる」のだそう。その時、なかなかうまく切れずに、息絶え絶えに最後まで抵抗する動物の姿を見て、吐きそうになったこともあるのだとか。
なまじ、スーパーでパック詰めされた肉を買い、何も考えずに食し、時には余らせて捨ててしまうこともありますが、こういった経験をすることで、自分たちが他の命の犠牲の上で成り立ち、生かされていることを再確認させてくれます。最近では、日本でも、子供たち自ら鶏をつぶし、解体して、調理し、食すという食育プログラムがあるそうですが、トルコでは昔からそういった体験が伝統の中で息づいているんですね。
さて、生贄の儀式が終わった後、肉は七つに解体され、一つは自分たちが持ち帰り、残りは近所や親戚、そして貧しい人たちにも配られます。コーランでは『分かち合いの精神』が大切とされ、この時期、トルコでは肉を分配するだけでなく、慈善団体への寄付や募金も行われます。
持ち帰った肉は、カウルマ(炒め煮)にして、その日の夕食に並びます。犠牲になった命に感謝をし、家族みんなで命のありがたさを分かち合います。
最近では、ネットやスーパーですでに解体された肉が販売され、祭りが簡略化されてきています。命の大切さを再確認するためにも、大切な伝統を受け継いでいってほしいものです。
投稿者:トルコのつぼ トルコ在住歴10数年。子育ての傍ら、ライター兼翻訳などをこなしている。チャイが大好きで、ピクニックにもMyトゥプ(ミニ・プロパン)を持参にチャイポットでチャイを作っている。座右の銘は「なるようになる」
●開催データ | |
国名 | トルコ |
都市名(地域名) | トルコ全体 |
イベント名(日本語) | クルバン・バイラム |
イベント名(現地語) | Kurban bayram |
開催時期(前回開催) | 2016年9月12~15日(月暦で毎年11日ほど前倒しになる) |
初回開催年 | – |
来場者人数(規模感) | – |
アクセス | トルコ各地 |
主催団体(名称) | なし |
公式ホームページ | なし |
料金 | 無料 |
予約 | 不要 |
知名度 | ★★★★★ |
おもしろ度 | ★★★★ |
開催場所(主な会場) | 各地 |
開催場所(住所) | 各地 |