コミーヌ Comines (ベルギー/フランス北部)
オランダ南部からベルギー、フランス北部にまたがる地域は、かつてフランドル伯領として栄えた地域です。そのせいか、国は違えど、様々な伝統に重なる点が多く見られます。その一つが、祭りの形式。この地方では、趣向を凝らしたパレードのあと、市庁舎や鐘楼の高い位置から「決まった何か」を投げるというパターンの祭りが多いのです。その「何か」は、町によって異なりますが、クッキー、ニシン、猫(のぬいぐるみ)…と、実にさまざま。
ベルギーとフランスの国境に位置するコミーヌの祭りで投げられるのは、「木製のおたま」です。「おたまを投げる祭り」だなんて、冗談のようですが、その起源は意外に古いもので、中世に遡ります。いわく、囚われの身となった領主が、無事を知らせるために家紋を捺したおたまを投げたとか、アジャンクールの戦い(1415年)で捕虜となった領主の身代金をコミーヌ市民が払い、自由市の特権を得たことを記念したとか、諸説残っています。実際、おたま歴史祭委員会の結成は1884年ながら、委員会メンバーの衣装には、今でも15世紀の領主の紋章が輝いています。
お祭りの期間は毎年10月第二週末の三日間(土-月)で、そのメインは何といっても日曜午後3時から始まるパレードです。ベルギーのコミーヌ駅をスタートした騎士や、旗手、鼓笛隊、「巨人」、コミーヌ市の歴史をあらわした山車などが、フランス側のコミーヌ市中心まで練り歩きます。「巨人」というのも、この地方の伝統的存在で、町ごとにいるスターのようなもの。大きなイベントや祭りに引っ張り出され、市民の士気を高めてくれます。
パレード中も、中世の衣装を身にまとった委員会メンバーやミス・コミーヌの乗る山車からはおたまが投げられ、群衆の歓声が上がりますが、一番のクライマックスは日曜17時、市庁舎からおたまが投げられる時間です。
ご想像通り、当たると痛く、危ないのですが、老若男女、皆なんとか幸運をつかもうと、駆け寄って手を伸ばします。
フランスのコミーヌ市と、ベルギーのコミーヌ市を隔てるのは小さな橋一つ。おたま歴史祭は、名前もスペルも同じ二つの町が共同で行うもので、ローカルでありながらインターナショナルな催しと言えます。
パレード見学は、メイン会場が多くあるフランス側がお薦めです。特に、フランスのコミーヌ市庁舎前では、パレードの歩も緩み、パフォーマンス披露も多いので、市庁舎前の広場あたりに陣取るのが一番楽しめるのではないかと思います。
参加される方、是非ともおたまをゲットしてください!ただし、くれぐれもお怪我のないように。
投稿者:冠ゆき 山田流箏曲名取。1994年より海外在住。多様な文化に囲まれることで培った視点を生かして、フランスと世界のあれこれを日本に紹介中。 Twitter: https://twitter.com/KanmuriYuki Instagram: https://www.instagram.com/kanmuriyuki/ Facebook:https://www.facebook.com/KanmuriYuki
●開催データ | |
国名 | フランス・ベルギー |
都市名(地域名) | コミーヌ(Comines) |
イベント名(日本語) | おたま歴史祭 |
イベント名(現地語) | La Fête Historique des Louches |
開催時期(前回開催) | 毎年10月第2週末(2016年は10月8~10日) |
初回開催年 | 1884年 |
来場者人数(規模感) | 5000~1万人 |
アクセス | フランス、リル(Lille)市レピュブリック広場からバスL90線で約45分。 |
主催団体(名称) | Comité de la Fête des Louches (おたま祭委員会) |
公式ホームページ | https://www.fete-des-louches.com/ |
料金 | 不要 |
予約 | 不要 |
知名度 | ☆☆★★★ |
おもしろ度 | ☆☆☆☆★ |
開催場所(主な会場) | フランスのコミーヌ市庁舎前(パレード見学におすすめ) |