リマの街が紫色に染まる！奇跡のキリスト「エル・セニョール・デ・ロス・ミラグロス」の聖行列

リマ（ペルー）

毎年10月は「紫の月」というなんとも風情のある名前で呼ばれるペルーの首都リマ。そのわけは10月の第1土曜と18、19、28日、11月1日に行われる「エル・セニョール・デ・ロス・ミラグロス（奇跡のキリスト）」の聖行列に由来します。エル・セニョール・デ・ロス・ミラグロスを象徴するのが、青味がかった鮮やかな紫色。聖行列の日にこの紫色のマントを羽織った信者たちが通りを埋め尽くす様は圧巻の一言。まさに「紫の月」の名に相応しい光景といえるでしょう。
さまざまなカトリック行事が催されるペルーにおいて、中でもエル・セニョール・デ・ロス・ミラグロスの聖行列の規模は最大級。カトリック信者でなくとも見る価値十分の、それは見事なイベントです。

路上で売られるエル・セニョール・デ・ロス・ミラグロスのロサリオやお守り。もちろんテーマカラーは紫！

ところでなぜ「奇跡のキリスト」と呼ばれるのでしょうか？
17世紀半ば、粗末なアドベ（日干し煉瓦）製の小屋の壁に、ある1人の黒人奴隷が磔にされたキリスト像を描きました。それからおよそ4年後の1655年11月、歴史的な大地震がリマを襲ったのです。街は壊滅的な被害を受けましたが、このキリスト像を描いた壁だけが崩れず残りました。その後再び地震がおきた時も、この褐色の肌をしたキリスト像の壁だけは傷一つなくその場に立っていたと言います。当時のスペイン副王がこの壁画を消去するよう命じましたが、なぜかうまく消すことができず、ついにその奇跡を認めるに至ったのです。
壁画はその後エル・セニョール・デ・ロス・ミラグロス（奇跡のキリスト）と呼ばれるようになり、ラス・ナサレナス教会で大切に奉られています。

リマ旧市街セントロ地区にある「ラス・ナザレナス教会」

教会の入り口で奉納されるろうそくも紫色

ラス・ナサレナス教会の祭壇の中央には、エル・セニョール・デ・ロス・ミラグロスの壁画が納められています

祭壇の手前に置かれているのが、聖行列のために造られた聖御輿。その上には壁画の模写が掲げられています。遠方からの写真なのでとても小さく見えますが、金銀や宝石で装飾された聖御輿の重さは2トン以上だとか。熱心な信者たちにとって、その重みに耐えつつ聖御輿を担ぐことは何よりも誇らしく、名誉なことなのだそうです。

模写した壁画に、金銀製の王冠や衣服が飾りつけられています

アルマス広場を進むエル・セニョール・デ・ロス・ミラグロスの聖御輿

紫色のマントを羽織った男性信者と、頭に白いレースを被った女性信者に先導され、エル・セニョール・デ・ロス・ミラグロスの聖御輿がゆっくりと市内を練り歩きます。女性信者の歌声と香の煙、黙々と聖御輿を担ぐ男性信者たち。その動きが大きなうねりとなって、周囲を圧倒していきます。カメラ片手に物見遊山で訪れる観光客も独特の雰囲気に飲み込まれるようで、聖御輿を前に感動で涙する人も。ペルーが世界に誇る宗教行事の1つです。

リマの街が紫色に染まる瞬間

最後に、紫の月には欠かせないお菓子「トゥロン」をご紹介しましょう。細く棒状に焼いたビスケットを交互に重ね、フルーツを煮詰めて作った甘いシロップをたっぷりかけたケーキタイプのお菓子。エル・セニョール・デ・ロス・ミラグロスの奇跡によって腕の病が癒えたという、ある黒人女性が作ったものが最初だそうです。ラス・ナサレナス教会の周辺には、この季節になるとトゥロンを販売する屋台がずらりと並びます。

甘いけれど、なぜか病みつきになる味

縁起のいいトゥロンを食べると、ご利益があるかもしれませんよ？トゥロンは日持ちするので、日本へのお土産にも最適です。

※合計5回行われる聖行列は、日ごとにルートが異なります。ウェブサイトや新聞で事前にチェックしておきましょう。周辺区域では交通規制が敷かれるので、時間に余裕をもって見学してくださいね。

投稿者：原田慶子
ペルー・リマ在住フリーランスライター。ペルーの観光情報を中心に文化や歴史、グルメ、エコ、ペルーの習慣や日常などを様々な視点から紹介。『地球の歩き方』『今こんな旅がしてみたい』『トリコガイド』『世界のじゃがいも料理』などペルー編の取材協力多数。「Keikoharada.com」にてペルー情報発信中。
HP：http://www.keikoharada.com/